MESSAGE

稲積 宏誠

セカンドメジャーとしての
スポーツに関わる学びを
創り上げよう

副学長
社会情報学部 教授

稲積 宏誠

セカンドメジャーという言葉を知っていますか? 日本語では副専攻と言いますが、自身の所属する学部での専門以外にもう一つ自分なりの専門性をもつことで、大学での学びを広く展開すること。このところ文部科学省もこのようなことを言い始めています。

青山学院大学にはスポーツ学部はありません。しかし、体育会に所属してさまざまな競技スポーツに、しかもとても高いレベルで取り組んでいる学生は数多く存在しています。そのような学生にとって、まさにセカンドメジャーはスポーツにかかわる分野ですね。

そんな、スポーツに関わる学際的な学びの場を提供することは、今大学が求められている取り組みの一つだと言えます。本来は大学としてのプログラムへと展開するべきでしょうが、まずは、同じく学際領域を専門とする社会情報学部がすべての学部の「スポーツをセカンドメジャーに」と考えている学生に向けたプログラムを開発しました。

それが、スポーツキャリアプログラムです。

これから、社会に出たときに、自身の出身学部に加えて主張できる学び。それは、「競技スポーツへの取組そのものを科学的に追及する」「将来の健康福祉社会への貢献に向けて」「社会・コミュニティの基盤をつくるノウハウとして」「今後のビジネス展開に結び付ける」など、まさに既存の専門分野を補完する将来への展望だと言えます。

このことは、競技スポーツに専念してきた学生にとっての将来展望を切り拓くことだけではなく、本学の体育会活動やスポーツ振興にもとても重要な意味を持つでしょう。なぜならば、スポーツを科学的に見ることの意味、チームを組織としてみる目、体育会を組織として考えることへと、学生自身が意識を変えていくきっかけをつくるからです。大学やそれぞれの指導者もともに考えていくべきテーマといえます。

カリキュラムの根幹は、公衆衛生学を専門とする佐藤敏彦先生とコミュニティマネジメントを専門とする苅宿俊文先生が設計しています。大学・各学部とのコラボレーションにはまだ多くの課題が残されていますが、このチャレンジをぜひ成功に結び付け、より活力のある大学に、また「青山スポーツは他とは一味違うね」と言われるような、セカンドメジャーとしてのスポーツに関わる学びを創り上げていこうと考えています。

佐藤 敏彦

「社会にインパクトを与える
青山スポーツ」の創造を目指す

社会情報学研究科 特任教授

佐藤 敏彦

私は医師ですが、スポーツドクターというわけではなく、「どのようにしたら病気にならないか、より健康になれるか」、ということを、研究したり、社会で実践したりする予防医学とか公衆衛生と言われる領域を専門としてきました。今回の青山学院でのスポーツキャリアプログラムでは、私のこれまでの知識や経験を総動員して、「社会にインパクトを与える青山スポーツ」の創造を目指したいと思っています。

医療の世界では、20数年ぐらい前にEBM(Evidence-based Medicine, 根拠に基づく医療)という「レボリューション(大変革)」が起こりました。それまで、各々の医師が自分の経験や推論に基づいて行ってきた医療行為を、さまざまなデータを集めることにより作られた「エビデンス=科学的根拠」に基づいて行う、ということがスタンダードになったのです。EBMにより、今まで良いと思われていた医療行為が実は意外と良くなかったことがわかったり、良いと思われていた医療行為をより良く、効率的に行うにはどのようにしたらよいか、ということがわかったりしてきました。

スポーツの世界においても長年にわたり経験による指導が支配してきたという印象がありますが、科学の進歩とともに、スポーツの世界でもさまざまなデータの取得が可能となり、科学的なトレーニング方法や戦術分析が取り入れられるようになってきています。この流れはこの先ますます加速されていくでしょう。即ち、スポーツの世界でもレボリューションが起きているのです。今流行の「ビッグデータ」を活用する新たなスポーツを「インテリジェントスポーツ」とか「スマートスポーツ」とか呼びますが、青学のスポーツキャリアプログラムではこれを一つの核にしたいと考えました。

EBMは一つのレボリューションではありましたが、当初に思われていたような大きな結果を残しているかというと必ずしもそうではりません。その理由は、EBMを実践する医師のコミュニケーション能力に問題があるからです。たくさんのデータから得られたエビデンスを患者さんに正しく伝えることができなければ、患者さんを納得させ、医師と患者が協力しあって最大の結果を得ることはできないのです。

スポーツの世界でも同様のことが言えるでしょう。今までと違う新たな「インテリジェントスポーツ」、「スマートスポーツ」を社会に広めて、スポーツの価値を高めるためには、人と人を繋げたり、人に物事を正しく伝えたりするコミュニケーション能力を持たなければなりません。スポーツキャリアプログラムのもう一つの核がこのような能力を併せもつ「コミュニティーサービスアスリート」です。

スポーツの価値を高め、広げる、これら二つのコンセプトを基盤とした「青山スポーツ」を一緒に作り上げていきましょう。

星川 精豪

青山スポーツを通し
「考える力」を身につける

社会情報学部 非常勤講師

星川 精豪

私はこれまでアスレティックトレーナーとして大学スポーツに関わってきました。大学スポーツという4年間の限られた時間の中で、選手として、また学生コーチ、マネージャー、アナリスト、トレーナーのような学生スタッフとして成長していく姿を近くで見てきました。そのような事から卒業した後に仕事での悩みや相談などを受ける事も多々あります。その内容はプロ選手になった者はパフォーマンスの相談、他にも資料の作成方法、グループディスカッションでの発表方法、顧客の分析など多岐に渡ります。しかしよく考えてみるとこれらの社会に出てからの悩みは、大学スポーツの活動の中で1度は誰しもが経験している事ではないでしょうか。恐らく普段は何も考えずに目の前を通り過ぎていった事象だと考えられます。そのような事から私は日々の部活動やクラブ活動での出来事に対する自身の行動を「俯瞰して見る」事が必要だと感じています。そして例えばチーム目標をインカレ優勝と掲げていた場合、そこに到達するまでの練習や活動中における「考える力」が大切だと私は思います。

これらの事をサポートするために、現在は様々なアプリケーションやソフトがあり、大学スポーツの現場でも散見されるようになってきました。これまでは監督やコーチからの1方向だった指導も、スポーツ現場へのアプリケーションの参入により、選手自身や学生スタッフで簡易的に映像分析が出来るようになりました。また可視化する事により、グループディスカッションを通しチームメイトへ分かりやすく伝える事も可能になりました。数字を活用しデータとしてパフォーマンスやコンディショニングを評価する事も可能です。

スポーツキャリアプログラムの授業ではそれぞれの競技力を高めるための知識を得るのみではなく、最新のアプリケーションやソフトを実際に使用し自身を「俯瞰して見る」事により、その先の社会でも必要な「考える力」も身に付けてもらいたいと考えています。「青山スポーツ」を通し、社会に出てからも楽しい人生にしていきましょう。

※本ウェブサイトの内容は2023年3月現在の情報です。